「旅するように暮らす」
このようなコンセプトで日本の不動産市場を”席巻”したOYOでしたが、この度日本から撤退することが決まったようです。
但し、メインのOYOのメイン事業であるホテル事業は継続します。
今のところホームページはまだ生きています。
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OYOって何?
CMなどでは出てこなかったので、あまり知らない人も多いかもしれません。
過去に書いた記事に詳しく書きましたので参照します。
OYO(オヨ)はインド発の2012年設立のベンチャー企業で、格安ホテルの予約サービスや宿泊施設の借上などを行い、世界有数のホテルチェーンとして確立しています。
また、ソフトバンクGが出資するなどして業界の注目を集めました。
OYOが展開した不動産賃貸事業 OYOLIFE
OYOは2018年7月末に日本に上陸しました。
当初、OYOは日本で激増するインバウンドを取り込むべく、ホテルや民泊など宿泊に関わるサービスを展開すべく進出しました。
↓がOYOの日本法人の商業登記簿謄本です。
会社の設立が平成30年(2018年)7月31日です。
しかし、日本の民泊においては180日ルールなど規制が非常に厳しく採算が取りにくいと判断された為か、同年10月29日(登記されたのは11月20日)に急遽「不動産賃貸事業」が定款に追記されました。
会社設立からわずか3ヶ月後のことです。
そしてその半年後に冒頭の「旅するように暮らす」をコンセプトにした「OYOLIFE」のサービスが東京で開始されます。
その後、大阪や名古屋でもサービスが展開され、徐々に認知度が高まっていきましたが…。
OYOLIFEの転落
OYOLIFEは仲介手数料無料、スマホで簡単契約、決済も全てスマホで行えるという手軽さから、多くの方に利用されるようになります。
客数の増加も相まって、OYOが借り上げる物件数も伸ばしていきました。
借上する際の料率が100%の物件も珍しくなく、とにかく物件を増やしてサービスを拡大いきました。
そこで問題になるのが稼働率です。
OYOはソフトバンクGなどから膨大な資金を調達していましたから、例えば1年くらいは赤字でも問題ありませんでした。
しかし、稼働率が3割程度だったことが後にOYO側から明かされています。
これでは赤字どころか大赤字で火の車。
OYOは名古屋と大阪から撤退(現在大阪では一部稼働)しました。
OYOLIFEの実質値上げ
大阪・名古屋の撤退と同時期にOYOは実質値上げを遂行しました。
仲介手数料は無料ですが、予約手数料11,000円(税別)と、退去時清掃費用16,500円(税別)を設定してしまったのです。
↑は実際にOYOが使用していた画像ですが、ちょっと嘘があります。
実際は↑のような感じ。
OYOは100%の賃料で借り上げたりしているので、賃料は他の一般的な賃貸物件の1.4~1.5倍程度に設定されています。
また、「Wifi完備」を謳っていますが、OYOが借り上げるような物件の多くは、他の一般的な賃貸物件にもWifiが完備されていたりしますので、差別化にはあまりなりません。
また、サービスがうまくいっている時の値上げは多少の客数減があったとしても単価でカバーできますが、サービスがうまくいっていない段階での値上げは下策です…。
OYOの失敗から学ぶ
敗者に鞭打つような記事になってしまいましたが、主旨はそうではありません。
OYOが不動産賃貸事業において、こうしておけば良かった点を挙げてみます。
OYOは潤沢な資金にモノを言わせて100%賃料での借上を遂行していきましたので、既存のマンスリー業者などは悲鳴を上げました。
通常、マンスリーを営もうと思えば70%とか80%で借り上げたりしますので、OYOはそこに楔を打った格好です。
これが多くのマンスリー運営の会社を敵に回しました。
マンスリーを運営しているのはレオパレスなどの独立系を除いて、ほとんどが地元の有力な不動産管理会社でした。
管理会社を含む不動産会社は横の繋がりが非常に強く、OYOの”悪評”が一気に広まり、なかなか物件が調達できなくなりました。
OYOLIFEを運営していた日本法人の当時の社長は「管理会社はめっちゃ友達です」と言っていましたが、実際の行動は残念ながらそうではありませんでした。
また、OYOが借り上げる際の契約書の多くには「採算が取れないと判断したらすぐに解約する」旨の特約が記載されていました。
契約したのに決済金を払わず解約したケースもあったとか。
まずは人口が多く、ビジネスチャンスが豊富な東京でビジネスを始めるというのはある種のセオリーです。
その東京で成功したら首都圏もしくは大阪や名古屋などのその他大都市圏に拡大していくのも通例ですね。
しかしOYOは東京で成功する前に大阪、そして名古屋へと急拡大しました。
東京でつまづき始め、大阪名古屋もコケて結果は撤退です。
潤沢な資金というものはこういった悪影響ももたらします。
”金主”からの圧力が相当あったのかもしれません(邪推)。
これが一番問題でした。
そもそも日本に民泊規制の厳しさを知らず(もしくは認識不足)やってきて、これでは採算が取れないと判断したまでは良いのですが、別のコンセプトを持ち出してきました。
そして、日本に上陸してからわずか3ヶ月の間に急遽決まったコンセプト「旅するように暮らす」OYOLIFEを実現しました。
※現在のコンセプトは「好きなときに、好きな街へ」
契約した方が鍵をうまく受け取れなかったり、ブッキングしたりして他の部屋をあてがわれたりしたことはサービス開始当初にはよくあることですが、これが結構頻出したようです。
需要見込みも甘く、稼働率が3割~4割では話になりません…。
まとめ
そんな訳で、OYOの不動産賃貸事業からの撤退は、影響は軽微ながら興味深いニュースでした。
日本の不動産業界は閉鎖的とよく言われます。
それが良くもあり悪くもありますが、そろそろ開放性や透明性が求められる時代に差し掛かっています。
OYOが”黒船”と呼ばれたように、また次の”黒船”がやってくるでしょう。
その時は上記のような3つの問題をクリアしてくるかもしれません。
そして業界が変わる転換点になるでしょうね!
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