リベ某不動産について

不動産

巷で話題のリベラルアーツ不動産(以下リベ大不動産と記載)。

不動産業として免許を持ち、心斎橋のビルの空中階に事務所を構えていますが、その集客手法は一昔前に出てきたアレです。

顧客の方に大手ポータルサイトのSUUMO、HOMES、アットホームなどから物件を探してもらって、気に入った物件があればそれを教えてもらい、レインズで探す。

物元に空き確認を行い、その物件のみを案内するという効率的なやり方です。

モアぞうが記憶している限りでは10年くらい前からこういった手法を執る業者が増えてきた印象です。

これらの業者はあんまり長続きしない傾向がありますが、単純に仲介手数料を無料にして紹介客を増やして売上を伸ばし、支店を増やしたりして成功している業者があるのも知っています。

さて、リベ不動産はこういった広告費やそれに纏わる手間をほとんどかけていないので、仲介手数料は0~0.3ヶ月分と格安です。

通常、不動産業者は地道に写真を撮って、地域情報を調べてお勧めコメントを練り、さらに多額の広告費をかけています。

最近は写真だけでなく、360度パノラマ写真や動画なんかも物件情報ページに貼り付けることが可能になっています。

20年前は内装写真ですら1枚も貼り付けられなかったことを考えると、ずいぶん進歩したものです。

こういった撮影の手間は1部屋につき1時間程度要する場合もあります。これにただ乗りされる訳です。

真面目にやっている不動産業者を完全に敵に回していて、ほかにもTwitterを見ていると、貸主としての立場の管理会社も彼らに嫌悪感を抱いている印象です。これはなぜでしょうか?文末にモアぞうの見解を載せておきます。

「織田がつき、羽柴がこねし天下餅、それを食らうは徳川」

って歴史の授業で学びました。リベ大不動産はこれに近いかもしれませぬ。

さて、彼らの立ち位置は我々と同じ不動産業者なのですが、HP上では(おそらくオンラインサロンでも)業界の中でも最低の部類の事例を集めてきています。列挙してみましょう。

「専任物件は高い」の真相

安く住みたいのであれば専任物件はおすすめしません。

なぜなら、仲介業者が強気で交渉にくるので、手数料が高くなりがちだからです。

引用:リベラルアーツ大学HPより

本末転倒です。専任物件って相場よりも安く良質な物件だから専任物件として抱え込む意味があるので、むしろお勧め物件が多いです。仲介業者が強気になりがちなのは本当ですが、それはあくまでも初期費用の話で、月々に支払うお金、つまりランニングコストは相場よりもむしろ安くなるはずです。

拒否すべき費用 いまだにやってる業者あるの?

本当は必要ないのに業者が仲介料を得るために入居費用として請求されているものです。

悪質な場合、原価の5倍ほどの価格を請求されることもあるので、注意しましょう。

そんな「請求されたら絶対に拒否すべき項目」は以下の通りです。

本当は必要ないのに業者が仲介料を得るために入居費用として請求されているものです。

悪質な場合、原価の5倍ほどの価格を請求されることもあるので、注意しましょう。

そんな「請求されたら絶対に拒否すべき項目」は以下の通りです。

絶対に拒否すべき項目
①書類作成費
②簡易消火器
③害虫駆除費や抗菌、室内消毒
④安心入居サポート

引用:リベラルアーツ大学HPより

明らかにおかしいのは①です。今時書類作成費なんて請求している業者はそれこそ絶滅危惧種です(モアぞうが知らないだけでまだいるんですか?)。

これを一番上に持ってきて下記のように記載しています。これは正しいんですがね、そんな業者がいればの話。

仲介業者が取っていい手数料は、「仲介手数料のみ」となっています。

書類作成費は入居者に請求できない項目であるため、支払う必要はありません。

引用:リベラルアーツ大学HPより

とは言え、簡易消火器や害虫駆除、安心入居サポートは多くの業者が提案していますね。

 

②や③は不要であっても強引に付帯させられるケースは確かにあります。これは残念な部分。

あと、2018年の札幌で起きたアパマンショップ直営店(平岸店)の消臭スプレー缶爆発事件で、付帯商品に対して嫌悪感を持つ人は一時的に増えましたね。

あの事故は消臭スプレー缶120本の処分をしている最中に起きたので、施工していないのに料金を取っていたんじゃないかってことで大問題になりました。

しかも賃貸仲介最大手の一角、アパマンショップのFCではなく直営店での出来事でしたから。これも恥ずべき事態。

さて、この中で④安心入居サポートは例えば鍵を無くした場合に無料で開錠してもらえたり、火災保険が付属している商品もあるので、入居者によってはメリットもあるでしょう。

仲介手数料取りすぎ? でもね

仲介業者によっては、「オーナーからいただいているのは仲介手数料ではなく、広告料や情報提供料です!」といった言い訳をしてきます。

それでも、仲介業者が入居者から受け取れるのは原則として、家賃の0.5カ月分までと決まっているのです。

「原則」としているのは、入居者が同意したら家賃の1カ月分まで支払えるからです。

実際に仲介手数料を1カ月分支払った男性が裁判を起こして0.5カ月分の返還が認められた判決もあります。

引用:リベラルアーツ大学HPより

裁判で0.5ヶ月分の返還が認められた判決は確かにありました。

仲介業者は大手不動産業者の東急リバブルということで話題になりましたね。

勘違いしがちですが、裁判の争点は借主から仲介手数料を1ヵ月分もらうのが違法かどうかではなく仲介業者側が借主からちゃんと承諾を得ていたかどうかになっています。

東急側はここに落ち度があり、結果0.5ヵ月分の返金となりました。

1ヵ月分を適法にもらうのは可能です。借主から適切に、かつ記録に残る形で承諾を得られていれば、です。

指定火災保険など加入しなくてもよい‥訳でもない

火災保険は、入居者の過失で家を燃やしてしまったり、水没させてしまったりした時に使えます。

基本的に入居するための条件として、火災保険への加入は義務付けられています。

ここで問題となるのが、仲介業者によって補償内容が不十分かつ割高な火災保険へ強制的に加入させられることです。

引用:リベラルアーツ大学HPより

このような仲介業者は保険の代理店も兼ねている為、火災保険の料金の中には代理店手数料も当然含まれています。代理店を通さないで自身で火災保険を加入すると割安になるのも本当です。

但し、ここでも”最低な事例”を一般的な事例として記載しています。

「補償内容が不十分かつ割高な火災保険へ強制的に加入させられる」は言い過ぎです。

家財の補償額を限界まで抑えたとしても借家人賠償責任特約も付帯しないとオーナーの物件を守ることはできません。

借家人賠償責任特約の重要性を語るにあたっては失火法という法律の説明が必要です。

仮に入居者が火事を起こして隣の部屋を含めて全焼させた場合、故意であったり重大な過失が無ければ隣の部屋に対する賠償は免れます。これが失火法です。

部屋を燃やしてしまった借主からすればラッキーって感じですが、ところがどっこい、オーナーへの原状回復義務は残ります。ワンルームであっても全焼であれば300万円はくだりません。

これを担保するのが借家人賠償責任特約です。絶対に必要です。これが無い火災保険は費用が安めになる傾向があります。

また、いくら補償が手厚く費用が安い保険があったとしてもアフターフォローの質までは分かりません。

頻繁に契約をしている代理店経由でのアフターフォローの方が手厚い傾向はありますので、仲介業者経由で申込をした方が良い場合も多いのです。

尚、国交省が出している民間賃貸住宅に関する相談対応事例集では以下のように述べています。

ざっくり言えば、火災保険の加入が入居条件であれば、これは従うべきで指定保険であれば原則これも受け入れて契約することになる。但し、貸主・借主双方の合意で任意の火災保険に加入することもできるということです。

「前提は指定保険加入でお願いね」って国交省が言っています。

火災保険で言えば、例えばこんなことがありました。

借主が酒に酔って倒れこんだ際に浴槽に亀裂を発生させてしまい、ユニットバスの交換が必要となりました。その費用は概算で50~60万円です。

保険適用により、明らかな借主の過失であっても過失分の3万円を引かれるのみで、あとの工事代金は保険金で賄われました。

部屋は新品のユニットバスになり快適です。

ここまで書いといて仲介業者の問題点についても指摘すると、そもそも火災保険の代理店でありながら保険の中身をよく知らない社員は多すぎます。

だから借主が持ってきた火災保険の内容と、自社で販促している火災保険の内容の違いが充分理解できず、結果自社の保険のごり押しになっている部分は確かにあります。

これも業界の悪習と言えるでしょう。

ハウスクリーニング代は”適法”の判決あり

ハウスクリーニング代です。

ハウスクリーニング代は、入居時と退去時に取られるパターンがあります。

入居時に取られる場合は、内覧してキレイだったらハウスクリーニングは不要だと伝えてください。

もし契約内容に退去時に請求される旨の記載があれば、交渉して外してもらいましょう。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」にも、ハウスクリーニング代はオーナーが負担するのが妥当だという記載があります。

引用:リベラルアーツ大学HPより

ここでは国交省の見解を持ち出しています。火災保険ではダンマリだったのに(棒)。

とは言え、確かに国交省はそのような見解を出しています。

では、ハウスクリーニング代が違法かと言えばそうではありません。

賃貸人Yは、賃借人Xに対して平成19年5月27日、本件貸室を契約期間2年、賃料月額5万6000円(他に共益費2000円)、敷金5万6000円とし、賃借人Xは賃貸人Yに同日敷金を支払うと共に、本件貸室の鍵交換費用として1万2600円を支払った。
本件賃貸借契約は平成20年2月17日に終了し、賃借人Xは賃貸人Yに対して本件貸室を明け渡したが、賃貸人Yがハウスクリーニング費用2万6250円を負担する特約(清掃費用負担特約)に基づいて敷金から2万6250円を控除し、また、賃貸人Yが入居時に貸室の鍵交換費用1万2600円を負担する旨の特約(鍵交換費用負担特約)に基づいて1万2600円を取得したことから、賃借人Xはこの2つの特約は有効に成立していないか、成立していたとしても消費者契約法10条により無効である、仮に無効でないとしても消費者契約法4条2項により取り消されたと主張してこれらの返還を求めて提訴した。

東京地方裁判所 平成21年9月18日

https://www.mlit.go.jp/common/001005066.pdf

ざっくりかいつまんで説明すると、ハウスクリーニング代25,000円(税別)は消費者を守る法律(消費者契約法)により無効だから返せって裁判です。

結果はハウスクリーニング代について、契約書に明記されていて事前に説明もされており、また賃料の半分以下の金額で消費者の利益は著しく害されてる訳ではないってことで、返金は認められませんでした。

裁判で一定の合理性があるって判断されているので、契約時にごり押ししても「じゃあ貸しません」ってなってもおかしくはありません。

もちろん、交渉次第で外せることはあるかもしれませんね(棒)。

ちょっと長文になってきました。それだけツッコミどころが多いのかしらん。

まとめ

まとめていきます。

「見てみぃ!不動産業界なんて闇だらけやし働いているやつもクズだらけやんか!だから騙されんようにこうせぇ!」

あっ、某有名作家先生のようにコテコテの関西弁で書いてみました。

リベ某不動産も大阪の会社ですしね。

さて、Twitterの不動産クラスタ界隈もあまり好意的ではない意見が多数派だと見受けられました。

モアぞうの私見で恐縮ですが、リベ大信者(あえて信者と記載します)の方々と、現場の不動産業者の方々とは、意見が相容れることが難しいかもしれません。

経済学の分野で行動経済学という学問があります。

元々、古典派経済学では「人は自分自身にとって最適で得をするモノやサービスを購入したり行動したりするはずだ」みたいな理論でした。

これに対して行動経済学では「人って必ずしも自分にとって最適で得をするモノやサービスを購入したり行動したりする訳ではないよね」って考え方に基づいた学問です。

体感的には後者の行動経済学の方が主流に思えます。

そしてリベ大の信者の方は前者が多数派、その他の方は後者が多数派だと思います。

漫画HUNTERHUNTERの強敵相手のドッジボールのシーン。ヒソカは損(怪我)をしてもゴンを立てて漢気を見せました。何のメリットもありません。

当時このシーンを少年ジャンプで見た時に何度も見返したぐらいめちゃくちゃカッコいいって思ったのを覚えています。

ナニワ金融道の落振県一HUNTERHUNTERのヒソカ、エライ違いや‥‥w

話がそれました。行動経済学ってそういうことです(雑)。

お部屋探しされたことがある方は分かると思いますけど、何でも良いから安く抑えたいって人であっても、より良い場所、より良い設備、より良い間取りなどを求めて、妥協したり納得したり、あるいは発見をしたりして、結果的に賃料や初期費用が最初に想定よりも高くなったりします。

それらに価値を見出すことにより、お金を支払う訳です。

もちろん仲介業者の接客サービスも費用に含まれていますので、営業マンも必死になって物件を探して提案して、案内時に飽きさせないように盛り上げ、最適なルートを選んで時短して、ここぞの時は全身全霊を込めてクロージングする訳です。

彼らは必死で仕事をしているので、安易に仲介手数料をゼロしたり格安にする業者とは相容れないでしょう。

また、貸主や管理会社も彼ら仲介業者の営業マンと直接やり取りする訳ですから、その頑張りを肌で感じ取っています。

貸主や管理会社は、何件も物件を客付してくれる営業マンや仲介業者には本当に感謝しているのです。

そこへやってきて、彼らの努力を無下にする新参の業者を敬遠するのも当然でしょう。

「とにかく安く、相見積もりは当たり前、自分は損したくない」

こういった方も一定数おられますね。単純にこういった方を貸主や管理会社は敬遠します。

面倒な入居者だからです。民法では契約自由の原則があるので、避けられるなら避けたいのです。

冒頭に述べた、仲介業者だけでなく、貸主や管理会社もリベ大不動産に嫌悪感を持っているのはこの2つの理由と思われます。

最後に、不動産業界は古いしきたりみたいなのがまだまだあって、改善すべき点は沢山あり、綺麗な業界とは言い難いのは事実です。

手数料ゼロの横取り業者が台頭してくるのも、こういった付け入るスキがあるからです。

そして、自由経済ですから、リベ大不動産のように法律に抵触しない限りはどんな手法を執るのも自由です。結局のところ勝手にやれば良いでしょう。

それが商業的に成功するかどうかは大衆の支持を得られるかどうかも1つですが、そもそも付帯無し、借主からの仲介手数料0~0.3ヶ月、かつ貸主借主からの仲介手数料1ヶ月分でやっていけるのかどうかの試金石となるやもしれません。

生暖かく見守ろうと思います。

軽く書くつもりが長文になってしまいました。

本日はこの辺で筆を置きます。

 

 

 

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