先日、保証会社のフォーシーズが訴えられた裁判で、最高裁判決が出ました。
これについての解説と所見をば。
概要
保証会社のフォーシーズが契約書条項に定めた文言が民法の信義則に反して消費者の利益を一方的に害しているということで、賃借人の代わりにNPO法人「消費者支援機構関西」が同社を訴えた裁判。
使用差し止め請求を受けた契約書の条項で、賃借人の同意なく家財を運び出すことができるとした条件は下記の通り。
以上4点。
まず、①家賃を2ヶ月以上滞納しているのはうっかりミスではないでしょう。
②は何度連絡しても(数十回程度)不通、訪問しても不在、緊急連絡先に聞いても分からない状態なので、広義の失踪状態と言えなくもない?
③や④は例えば電気水道ガスが止められていたり、ベランダに物を干している様子が無かったり、ポストにチラシが溜まっている状況でしょう。
これらに加えて、例えば明らかに人が住んでいては住めないような臭気が立ち込めていたりすると中で死んでいるかもしれませんね。
最高裁の判決では、「フォーシーズさん、やりすぎだよ」ってことで上記の条項の使用差し止めを命じました。
俗に言う「追い出し条項」
ここまでが概要。
フォーシーズの条項は、家賃を2カ月以上滞納▽連絡が取れない▽建物を相当期間利用していない▽建物を再び使わない意思が客観的に見て取れる――の4要件を満たせば、賃借人が住居を明け渡したとみなす内容。小法廷は、条項により賃借人が建物を使う権利が消滅していなくても保証会社が一方的にこの権利を制限することになると指摘。建物明け渡しの裁判などを経ずに保証会社が明け渡しを実現できてしまう点も踏まえ「賃借人と保証会社の利益の間に看過し得ない不均衡をもたらしている」として、条項は消費者契約法に違反すると結論付けた。
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さて、一般の市民感覚で言えばどうでしょうか?
貴方が人に物を貸した時に、約束していた使用料を払わない、連絡が取れない、どこにいるか分からない。でも貸した物は目の前にある。
取り上げるのが普通ですが、賃貸物件はそうもいきません。
悪名高き借地借家法という法律があります。
この法律のエグいところは、下記の記事にて実例を交えて書き連ねています。是非ご一読ください。
で、今回の判決の影響ですが、実はそれほど大きな影響はありません。
ざっくり言えば”現状が追認された”という状態だからです。
もちろん悪しき風習だとは思いますが。
影響があるとすれば賃借人(消費者)の方です。部屋を借りる方。
今回の保証は消費者団体(消費者の代表として)から保証会社(事業者)を訴えたものです。
表向きは消費者を守るための訴訟でした。
家賃滞納をされても家主は家賃入金済として税金を納めないといけませんし、最低でも3ヶ月分滞納されないと裁判も起こせません。
明け渡しの判決を勝ち取るにも弁護士を立て、様々な証拠(写真や内容証明など)を用意し、さらに数か月‥‥下手したら1年以上かかる場合もあります。
そんなのやってられません。
ますます保証会社の利用が促進されるでしょう。
負担するのは多くが賃借人(消費者)となります。
これで良かったのか?消費者団体。
とは言え、都心部ではほとんどの自主管理物件や管理会社が管理している物件いずれも賃貸借契約に保証会社への加入が必須になっていました。
今後は地方の自主管理物件なども100%に近くなってくるでしょうね。
今回、自力救済を一部でも認めた大阪地裁、大阪高裁は天晴でしたが、最高裁は相変わらずの前例主義で革新的な判決とはなりませんでした。困ったもんだ。
ってことで、以前書いた「誰のための保証会社?」全2回も添付しておきます。
これはなかなかの力作です。
おまけ
このように、ある当事者(今回の場合は消費者)に寄り添った活動が、逆にその当事者を苦しめることになるというような事例は他にもあります。
例えば、一番分かりやすい事例が最低賃金です。
「時給を最低1,500円に上げろ~」って叫んでいる某政党がありますが、韓国は2018年と2019年に最低賃金を30%も上げて失業率3.8%から4.4%に爆増しました。
何が起こったかと言うと、上げすぎた最低賃金のせいで企業は省力化(飲食店のセルフサービスやロボットやAIに業務を切り替え)にシフトした結果、人を雇わなくなってしまったということです。
日本でも、もし最低賃金を1,500円などに上げてしまうと同じようなことが起こるでしょう。
もう一つの例えが脱酸素です。
電気自動車や太陽光発電が推奨されていますが、電気を作るのにも太陽光パネルを作るのにも大量の二酸化炭素を放出することになります。
差し引きすると、ハイブリッド車を使用、発電は原子力や天然ガスはもちろん、石油や石炭で発電した方が二酸化炭素の排出が抑制される説もあります。
何かに寄り添うことで表面上良くなったように見えても、その結果はより悪くなるってのはよくあることです。
ちなみに、不動産屋の視点ではフォーシーズは更新料が安いし、審査もほぼ通るので使いやすいです。
今は居住用も扱っていますが、当初は事業用物件に特化していました。
中小法人の契約の場合、代表者が連帯保証人ってNGの保証会社が多いのですが、フォーシーズはOKだったりします。余談でした。
そんなこんなで、今後の借地借家法にまつわる裁判やその判決には今後も注目していきたいですね。
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