新型コロナウィルスが実体経済への影響を強めるとの見方で、株式市場がいち早く反応し、乱高下を繰り返しています。
以前記事でも紹介しましたが、観光・宿泊業への影響が最も顕著で、それに伴って飲食業や運輸業なども先行きが不透明です。
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不動産業においては、住宅設備の供給に遅延が発生。
住宅機器メーカーのLIXILやTOTOなどではHP上で遅延の実態を公表しています。
様々な業態で悪影響が出始めており、景気の先行き不安を踏まえ、今後の不動産価格への影響を考察していきます。
用地仕入れストップ
用地の仕入れについては、ホテル業界は当然ながらほとんどがストップされています。
「お得意様」である韓国は昨年の輸出基準の見直しへの反発から、すでに訪日観光客が激減していましたが、今回のコロナ騒動で短期ビザの取得が不可能となり、中国人観光客とともにさらに減少する見込みです。
中国、韓国、台湾、香港からの訪日観光客は全体の7割以上にのぼり、さらに他の国からも流入が見込めない状況の中、ホテル内でもビュッフェの閉鎖や貸し会議室なども稼働が悪くない、さらに周辺のイベントも自粛されることから、追い打ちが凄まじい状況になっています。
キャッシュが乏しいホテルは倒産するリスクが顕著に出てきます。
また、ホテル用地として仕入れた土地の建設計画が凍結され、売りに出される可能性も高いです。
こうなると、ホテルというライバルが不在のマンションディヴェロッパーには追い風となるかもしれません。
しかし、建売住宅業者については少し事情が異なります。
冒頭で述べたように、中国で工場閉鎖からの部品の調達が滞っており、トイレや給湯器など生活に必要な住宅設備が供給できず、新築の引き渡しが遅れる事態になりつつあります。
すでに中堅の建売業者に用地仕入れをストップする動きが出てきています。
分譲マンションは用地仕入れから完工まで小規模でも1年~2年以上かかるので、さすがにそれまでには今回の騒動は収束していると見込まれる為、マンションディベロッパーには用地仕入れに関して影響はありません。
但し、現在建築中の物件を抱えているマンションディベロッパーは一部引渡しができない可能性があり、一時的ではありますが苦しい状況になります。
J-REITについて
不動産価格の指標としてはいくつかありますが、日本の証券取引所に上場されている不動産投資信託があります。
これをJ-REITと呼びます。
J-REIT(ジェイリート)とは?
不動産価格を見る上で、証券取引所に上場されているREITの株価を見ておくことも重要です。
REIT単独銘柄と、東証REIT指数というREIT全体の動向を示す価格指数もあります。
東証REIT指数は、上場している全てのREITを対象としていて、時価総額加重平均されたものです。
2019年12月1日から3月12日までの動向を見てみましょう。
参照:東京証券取引所株価指数ヒストリカルグラフー東証REIT指数ー日足チャート(2019年12月1日~2020年3月12日)
最高値は新型コロナウィルスの実体経済への影響が見えていなかった2月20日で、2250.65という値を付けています。
北海道や大阪市で公立の小中学校などで休校要請がありましたが、その後2月27日に安倍首相自らの発信で全国の小・中・高校の休校要請が出されました。
そして3月12日は1783.5ということで、ピーク時の2250.65と比較すると約21%ダウンです。
REIT指数は不動産全体の今後の価格の目安ともなりますので、どのあたりの指数で落ち着いてくるかは今後注目されます。
歴史に学ぶために、リーマンショック前後まで遡ってみましょう。
参照:東京証券取引所株価指数ヒストリカルグラフー東証REIT指数ー月足チャート(2006年1月~2020年3月)
なんと下落率は21%どころではなく、73%でした。
今回のコロナショックがリーマンショック以上かどうかはまだ分かりませんが、例えばG20レベルの国がデフォルトしたり、先進国の大手の金融機関が破綻したりするタイミングが重なれば、確実にリーマンショックを超えてくるでしょう。
とは言え、市場は非常に冷静に景気の先行きを見ていますので、NYダウ平均が史上空前の下げを見せたり、日経平均もそれに連動して凄まじい下落です。
REITの株価は日経平均株価に少し遅れて反応する傾向がありますので、今後さらに下がる可能性があります。
そして、REITの指数は不動産価格の指標の1つですので、不動産価格も同じように下がる傾向があります。
オフィス市場への影響
賃貸住宅の賃料と違い、オフィスの賃料は空室率や景気の影響に対して敏感に反応します。
例えば、賃貸住宅の賃料はどれだけ不景気になってもほとんど変わらず、数年前は相場通りだった賃料50,000円の部屋が退去すれば、次の募集ではせいぜい45,000円になる程度です。
ところが、オフィスの場合は例えばリーマンショックの次の年あたりの賃料が1坪あたり8,000円だったものが、直近の募集では1坪あたり15,000円とか16,000円になったりします。
まさに需要と供給によって価格が決まる経済の掟そのものです。
現在、東京も大阪も名古屋も福岡も、あるいは全国の政令指定都市レベルの都市では、オフィスの空室率は非常に低く好調を維持してきました。
例えば、東京では千代田区の大型ビルはほぼ空きがなく、空室率は0コンマ数パーセントです。
大阪でも梅田周辺はこれに近い状況で、それもあって大阪梅田ツインタワーズ・サウスや梅田3丁目計画、うめきた2期のような大型オフィスビルの建築計画が目白押しとなっていました。
ところが、ここにきて実体経済への影響として、具体的には旅行代理店、人材派遣の会社などがオフィスの新規申込のキャンセルを出しています。
また、原状回復工事の部材が足りない、オフィスビル内の会社で感染者が出てしまった際の対応など、これまでのオフィスビル経営の中で経験したことが無いようなことが出てきて混乱しています。
また、コロナショックが終息したとしても、リモートワークへのシフトが進む可能性があります。
これまではリモートワークは企業側が避けてきた傾向がありますが、今回の騒動で「リモートワークで十分出来るじゃん」という状態が作られつつあります。
例えば、IT大手のGMOインターネットは、入社式および集合研修もグループ合同でオンラインで開催することを明らかにしており、社員4,000人をリモートワークに移して2ヶ月近く経過したものの影響は軽微とのことです。
一部の業種であっても、リモートワークへのシフトが進むと、確実にオフィス市場の需要は下がりますので、新型コロナウィルスの終息から数ヶ月~1年後あたりから影響が出てきそうです。
不動産価格はいつ頃影響が出る?
不動産価格に影響を与える要因は多々ありますが、今回のコロナショックによる影響として考察していきます。
日経平均株価下落すると、企業や投資家は手元資金の調達の為に保有していた株を高値のうちに売却しようとします。
これが株価下落に拍車をかけて、さらに下がるという悪循環になります。
不動産も同様ですが、株が現金化するまでに数日しかかからないことに対して、不動産は実務上どうやっても最低3ヶ月以上かかります。
つまり、株価の動きから遅れて不動産価格が影響を受けますので、半年から1年くらいのタイムラグがあります。
現在の株価が半年後から1年後の不動産価格の指標になります。
まとめ
今のところ、日本政府は経済対策として、企業の資金繰り対策等の金融支援として、1.6兆円規模の予算を据える予定です。
アメリカは5兆円規模、他の先進国もすべて日本を上回る予算を見込んでいますので、やや物足りない印象です。
世界の株式の2020年3月9日~13日までの5日間で、時価総額10兆ドル(約1,000兆円)減りました。
市場の見方は経済活動がそれだけ制限されるだろうという予測です。
3月15日にはFRBが1%の緊急利下げを発表。
不動産価格については経済活動の縮小に合わせて下落しますので、今後不動産の購入を視野に入れられている方は今購入するのはお勧めしません。
不動産価格が上昇する機運が見られるとすれば、株価が安定してくる局面なので、このタイミングを逃さないようにすれば高値掴みは防げる可能性が増します。
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