Aさんが言いました。
「日本人の平均身長は、20代男性が171.8㎝、20代女性が157.9㎝です。年齢が上がっても男女差は概ね13~14㎝です。よって、統計によれば一般的に女性よりも男性の方が背が高いと言えます。」
この事実に反論する人はいるでしょうか?
Bさん「いや、そんなことはない!私は女性だが身長は175㎝あって、たいていの男性よりも背が高い」
Cさん「そうだそうだ!僕は男性だが身長は150㎝だ。この統計は間違っている」
こんな風に言ってくる人はもしかしたらどこかにいるかもしれませんね。
でもAさんに対して、Bさん及びCさんの議論はかみ合いません。
Aさんは全体的な話で一般論、BさんとCさんの話は身近な的な話で個別論。
これと似たようなことがありました。
例の日銀の黒田総裁の発言。「一般の家庭が値上げを容認している」
黒田総裁を庇うわけではないですが、値上げ容認については全体的な話で、かつ、データもあります。
こういう場合は、可能な限り一次ソースを見ます。
日銀のホームページに黒田発言の全文が載っています。
そこで、本日は、欧米との比較も交えながら、わが国で金融緩和の継続がなぜ必要なのかをお話します。そのうえで、日本銀行の目指す2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現に向けた道筋について、私自身の考え
を申し述べたいと思います。中略
2%の「物価安定の目標」は、持続的・安定的に達成される必要があります。4月の生鮮食品を除く消費者物価は、概ね事前に予想していたとおり、前年比+2.1%と表面的には2%に到達しました(図表3)。これは、3
昨年実施された携帯電話通信料引き下げの影響の多くが剥落するもとで、エネルギー価格が大幅に上昇したことが主因です。一方、生鮮食品とエネルギーを除いたベースでみれば、消費者物価の上昇率は+0.8%となっており、必ずしも、エネルギー以外の幅広い品目で物価の上昇が明確になっている訳ではありません。日本銀行の見通しでは、生鮮食品を除く消費者物価は、2022年度こそ+1.9%の伸びとなりますが、エネルギー価格の押し上げ寄与の剥落が見込まれる 2023 年度には+1.1%までプラス幅を縮小する見込みです。もとより、2%の「物価安定の目標」の実現とは、消費者物価の上昇率が、エネルギー価格の上昇などにより一時的に2%に達することではなく、景気の変動などを均してみて、平均的に2%になることです。そのためには、現在の強力な金融緩和を継続することで、企業収益や雇用・賃金が増加し、その中で物価の基調も緩やかに上昇する好循環を形成する必要があります。中略
ここからは、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的な形で実現するための具体的な道筋について、お話したいと思います。
中略
日本で2%目標を持続的・安定的な形で実現するためには、賃金が明確に上昇し、サービス価格が長年のゼロ・インフレから脱却できるかどうかが、重要なカギを握ると考えています。
中略
このように、企業の価格設定スタンスが積極化している中で、日本の家計の値上げ許容度も高まってきているのは、持続的な物価上昇の実現を目指す観点からは、重要な変化と捉えることができます。この点について、東京大学の渡辺努教授は、興味深いサーベイを実施されています(図表9)。具体的には、「馴染みの店で馴染みの商品の値段が 10%上がったときにどうするか」という問いに対する家計の回答について、日本も含めた5か国を対象に、定期的に調査を行っています。
昨年8月の前回調査では、日本の家計の半数以上は、値上げに対し「他店に移る」と回答しており、まさに屈折需要曲線が想定するような状態でした。これは、「値上げを受け容れ、その店でそのまま買う」との回答が半数以上を占める欧米とは、大きく異なっていました。もっとも、この4月に実施した調査では、日本の回答結果に変化がみられています。すなわち、値上げに対し、「他店に移る」との回答が大きく減少し、「値上げを受け容れ、その店でそのまま買う」との回答が、欧米のように半数以上を占めるようになっているのです。
以上が概略。
次にエビデンスです。
東京大学大学院経済学研究科経済理論専攻 JSPS「対話型中央銀行制度の設計」研究代表者である渡辺努氏によるデータです。
「5か国の家計を対象としたインフレ予想調査」(2022年5月実施分)の結果
日本の家計の値上げ耐性が高まった
• 「馴染みの店で馴染みの商品の値段が10%上がったときどうするか」という問いに対して、前回調査では日本の家計の過半は「他店に移る」と回答しており、「その店でそのまま買う」(=値上げを受け入れる)との回答が過半を占める欧米と異なっていた。しかし今回調査では日本も欧米と同じく値上げを受け入れる回答が過半となった。
2021年の8月と、2022年の4月の消費者行動を比べたグラフです。
馴染みの店で馴染みの商品が10%値上げした場合、2021年8月は値上げを容認せず他店に移ると回答した人の割合は57%でしたが、2022年8月には44%に下がっています。
グラフにするとこんな感じ。
ネットスラングで「事実陳列罪」というのがあります。
事実を言うと怒られる。毛髪の建ぺい率が低い方にハゲって言ってはいけない感じのアレです。
冗談はさておき、黒田総裁の発言を再確認しましょう。
日本の家計の値上げ許容度も高まってきている
このデータから読み取ってみると、全く間違った発言ではないですね。
尚、日本におけるアンケートの回答者の数は8,383人です。サンプル数としてはある程度信頼できる数値と思われます。
日銀の黒田東彦総裁は8日の衆院財務金融委員会で「家計の値上げ許容度が高まっている」とした自身の発言について「全く適切ではなかった。撤回する」と述べた。黒田氏は6日に共同通信社が都内で開いた会合で、家計が値上げを受け入れつつあるといった趣旨の発言をし、SNS(交流サイト)などを中心に批判が出ていた。
日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB085YY0Y2A600C2000000/
日経新聞では批判記事。
8日には撤回に追い込まれたものの、SNS(ネット交流サービス)上などで批判が続いている。ツイッターでは「#値上げ受け入れてません」というハッシュタグ(検索目印)が一時トレンド入りした。
毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20220608/k00/00m/040/083000c
毎日新聞も批判記事。
日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁は6日の講演で、家計の物価に対する見方について「家計の値上げ許容度も高まってきている」との見解を示した。日銀の金融緩和政策によって急速に進んだ円安も影響して物価が上昇し、家計の負担は増しており、発言が波紋を呼ぶ可能性がある。
朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/ASQ667G0YQ66ULFA024.html
朝日新聞も当初から批判していますが、その言い回しなんかは秀逸()です。
”家計の負担は増しており、発言が波紋を呼ぶ可能性がある。”
こういう書き方をする時は波紋を呼んでほしいんですw
黒田氏は6日に東京都内で行った講演で、物価動向に詳しい東大教授の調査を例示し、独自の見解として「家計の値上げ許容度の改善につながっている可能性がある」と指摘した。しかし、SNS上に加え政財界からも批判が相次ぎ、黒田氏は8日も「家計が値上げをやむを得ず受け入れていることは十分に認識している」と述べるなど連日釈明に追われている。
読売新聞も批判。でも値上げ許容の根拠として具体的に例示していますのでまだ良心的?です。
日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁は8日、「家計が値上げを受け入れている」という6日の講演での発言を撤回した。長年デフレと戦ってきた黒田氏だけに、ようやく物価が上がり始めたことに対する前向きな受け止めをデータを基に説明した形だが、値上げにあえぐ人々の逆鱗に触れた。経済社会全体をみるマクロ経済の観点で正しくても、消費者目線では受け入れられないというコミュニケーションの死角が浮かび上がる。
産経新聞 https://www.sankei.com/article/20220608-4QLY3ZR32ZMPTIKH4YH3GUXHZM/
産経新聞は、言っていることは分かるがコミュニケーション不足でしたね、という結論です。
まあどこの新聞も程度の差こそあれ、批判一色なのは印象的でした。
で、ここから本題(やっとか)。
6月6日の黒田総裁の講演でも、安定的な2%の物価上昇が起こるまでは、これまで行ってきたような大規模な金融緩和は継続すると明言しています。
尚、生鮮食品とエネルギー価格を除いた物価上昇率(コアコアCPI)はいまだに0.8%です。
値上げで困ってる困ってるって言ってる対象が生鮮食品だったら、そんなの天候不順なんかで毎年のように起こっているので、別に今だけが問題じゃあありやせん。
エネルギー価格の上昇による値上げについては、日本単体でどうこう出来るレベルではないので(せいぜい軽減税率)、こちらもどうにもなりません。
そして大事なことは、これだけエネルギー価格や原材料価格が高騰している中で、各種の商品やサービスの値上げをせずに給料が上がることはありません。
ってことで、全体的に景気を良くするために、会社員の給料を上げていこうと思ったら、ある程度の値上げの許容なんて当たり前なんどすぇ(何故か京都弁)。
分かりやすい例で言えば、バス代なんてかつては10円って時代がありました。
今は一部の都市部の短距離区間を除けばだいたい200円くらいじゃないですか?
ここからが不動産投資の話(無理やり)。
物価上昇目標2%に設定している中で、もうかれこれ5年も6年もの間全く達成できていません。
ようやくその兆しが見えたと思ったら消費増税なんかやらかして景気の腰を折る、コロナショックが起こる、マスコミが総出で値上げは悪だと煽る(イマココ)。
こんな状況下では、黒田総裁の意向云々もさることながら、当面は金融緩和にブレーキがかかることはないでしょう。
ってことで金利も上昇しない、利上げもできないから円安が加速or継続して、外国人投資家が不動産を買いにくるかもしれませんね。
その他、不動産で言えば外国に住所を置いている不動産投資家は、円安のせいで本国に送金できるお金が実質的に減ってしまうことから、売り控えをしていたり、値下げ交渉に応じないという現象が起きてきています。
中国人投資家に多いですね。全然下げてくれません。まあミクロな話ですが。
で、最後に思うこと。
今回の黒田発言へのバッシングは良いサンプルです。
全体の話をしている時に、個別の話を持って来られても議論になりません。
「うちは値上げを許容していません」とか「あんたは給料が良いから許容できるんだ」とか。
今回の件は黒田総裁も、個別の感情論を相手にするのが面倒だから謝っただけじゃないかと思います。
不動産投資で無理やり当てはめてみると‥‥
例えば、全体的に不動産融資が出ていない中で「いや俺は買えてるよ」って方は、すでに与信が半端ない方だったり、地主の婿養子だったり、エリサー&実家が太かったり、何らかの特殊な事情があったりしますので、よくよく見極めてから、無理せず、夢を見すぎず、あくまでも自身のステージに合った投資手法を見出していかねばなりませぬ。
投資ではなく投機、常に超ハイリスク・ローリターンになってしまいがちで、貯まるお金も貯まりません。
特に、自分はいつも損をしてきた、と思っている人はそれを取り返そうとして大きなリスクを取りがちです。経験者は語る‥‥げふんげふん‥!
ご注意くださいませませ。地道に行くのが近道かもしれません。
コメント
ブログ主様書込みお許し下さい。
日本が侵攻されぬ為どうか皆様に知って頂きたい、中韓へ忠誠を表明した野党が阻止する改憲の必要性とその日本献上策を、危機感を持ち知って頂きたく誠に恐縮ですが書込ませて頂きました。
報道するテレビが無い中、尖閣奪取を狙う、中国の日本領海侵犯が激しさを増す現状は、かつて9条の様に非武装中立で平和的であったチベット等を現在も中国が武力で侵略虐殺を行う惨状を連想させ、
韓国が日本の竹島を不法占拠した際、多くの船員が機関銃で襲撃され死傷し、北朝鮮には国民を拉致され、
尖閣には中国が侵犯する現状でも、9条により日本は国を守る為の手出しが何一つ出来ません。
中朝ロの数千発の核ミサイル標準は常時日本に向けられており、尖閣、台湾周辺の動きも激化する中、9条を改正し自立した戦力を持たなければ、
有事に敵地攻撃力を持たぬ現状防衛力では日本人の命と領土は守れません。
中韓による侵略は、野党が法制化を目指す外国人参政権や(民主党政権の超円高誘導は日本経済を破綻危機に追い込みました)
又「朝鮮の役に立ちたい」と表明した維新による、国の権限を弱め、地方独立から国家分断を図る道州制等、多様性と言う名の文化破壊活動からも始まっており、
外国人参政権は米国始め世界的に認める国は少なく、これを与えた事でハワイは米国に、ウクライナクリミア半島もロシアに乗っ取られた過去があります。
又背乗りやスパイ等の犯罪発見の役割も果たしている戸籍廃止に繋がる夫婦別姓や、日本人のみを処罰対象とした、特定国への反論を封じるヘイトスピーチ条例等、
先進国で唯一スパイ防止法が無い日本で、
中韓に軸足を置き、友好を刷り込む野党やメディアが、制度の危険性を隠し国民を誘導する現状からも、既に浸透工作は最終段階である事、
日本でウクライナの悲劇を生まない為に投票の大切さと、一人でも多くの方に目覚めて頂きたいと切に思い貼らせて頂きます。
https://pachitou.com
長文、大変申し訳ありません。